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銭形雷」の第6話「お帰りなさいませ、ご主人様! 〜萌え系メイドカフェ殺人事件」の「裏ネタ編・増補」の6回目となる今回は、この物語でのトリックに使われた「燐」関係から、「
燐」について、「
白燐」について、「
黒燐」について、「
紫燐」について、「
赤燐」について記します。
尚、BS-iの本放送時に記した記事は2006/2/6付けで、MBSでの放送時に記した[改訂版]は「
ここをクリック」(ここにはBS-i本放送時に記した記事へのリンクもあります。)してご覧下さい。
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燐」:英語では「Phosphorus」と言う。原子番号15の元素であって、窒素族元素の1つである。また、元素記号は「P」、原子量は30.97である。常温では固体であるが、自然界では単体では存在せず、燐酸塩という形で広く存在している物質である。また、人間をはじめ、生物の体内にも含まれている物質でもある。(生体必須元素の1つとして知られていて、DNAの一部を構成しているのと、骨、歯に含まれている。)
同素体については、白燐、黒燐、紫燐、赤燐、黄燐などがあって、10種類以上が存在することが分かっている。但し、現時点ではその全てが解明されている訳ではない。(それらの中でも、特に赤燐と黄燐(白燐)は幅広く利用されていることから、一般に広く知られている。)同素体は、同じ元素から成るが、原子配列が異なるために性質も全く異なるという物質である。酸素とオゾン、墨(黒炭)とダイヤモンド同素体として有名であるが、燐の同素体は種類が多いこと、その性質は全く異なっているということから、「同素体とは?」と言った場合、必ず引き合いに出される物質である。
燐の物理的な特性を記しておくと、融点は317.3 K(約44゜C)、沸点は550 K(約277゜C)である。(但し、複数の同素体があり、それらの同素体では融点、沸点、発火点なども異なる温度となっている。)また、多くの放射性同位体が存在していることでも知られている。(但し、安定物質は普通の燐(原子量31)のみである。また、同位体の半減期はそれほど長くなく、半月とか一ヶ月程度という時間スケールである。)
歴史は、1669年にドイツの錬金術師であるヘニング・ブラントが発見し、抽出することに成功し、1680年にアイルランド出身のロバート・ボイルが抽出方法を開発し、その助手・アンブローズ・ゴドフリーが商業的な規模に改良されたことで、広く利用される物質となった。
主な用途は、化学肥料、農薬、殺虫剤、化学兵器、マッチ、食品添加物などがあるが、現在では化学肥料(リン酸化合物の種類は変化している。)としての消費が最も多くなっている。殺虫剤や化学兵器に関しては、リン酸化合物が使われているのだが、毒性が高い化合物が多く、一部の物質は現在では使用が禁止されている。(その毒性を利用して農薬や殺虫剤、更には化学兵器が作られた。多くの神経ガス(サリンなど)も有機燐化合物を使ったものである。)
また、洗剤に使用されていた時期もあるが、その排水による湖や海の富栄養化によって赤潮が発生するという公害が大きな問題となったことから、こちらも規制が掛けられるようになったことでも知られ、現在では「無リン洗剤」は当たり前となっている。
工業的には、天然にある燐鉱石を、コークス、ケイ砂と共に粉砕混合し、それを電気炉の中で加熱し、生じた燐の気体(蒸気)を水中に集めることで黄燐を作り、その黄燐を更に異なる処理をすることで他の同素体を作っている。
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白燐」:燐の同素体の一つであり、強い毒性を持っている物質であり、ニンニクに似た臭が図物質である。(→この物語では、これが使われていたと言うことになる。)ちなみに、燐で軸性を持っているのはこれだけで、他の同素体は無毒である。
分子構造は正四面体型であり、常温では白い色をしていることから「白燐」と呼ばれている。比重は1.82、融点が44.1℃、沸点が280℃であり、発火点が約60℃という低温であるため、その扱いが難しく、通常は水中で保管される物質である。(空気中にあると、酸化されて青白い光を発し、また熱を発するため、空気と触れないようにするためである。また、水には不溶であるためでもある。)
普通にあるものは、表面が微量の赤燐で覆われた状態になるため、「黄燐」ということもある。
また、これを利用した化学兵器が製造されていて、爆弾も作られたことがある。兎に角、猛毒性の危険な物質である。
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黒燐」:燐の同素体の一つであり、燐の同素体の中では最も安定している物質である。(空気中でも発火しない。)また、これは半導体である。(半導体としての利用がある。)比重は2.69と重くなり、融点は587.5℃、鉄灰色の金属光沢を有していることから「β金属リン」と呼ばれることもある。
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紫燐」:燐の同素体の一つであり、金属光沢を持っている物質であり、そのため「α金属リン」と呼ばれることもある。色は暗紫色をしている。黒燐は半導体であるが、紫燐は電気伝導率の低い物質であるため、絶縁材料として使われることもある。特性は、比重は2.35、融点が589.5℃、昇華点が416℃である。
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赤燐」:燐の同素体の一つであるが、これは紫燐を主成分とした白燐との混合体である。(が、研ぐ意的には紫燐、白燐とも異なっている。)赤褐色をしていることから「赤燐」と呼ばれることになった。また、最近では使い捨てライターが普及したことでマッチの需要が減っているが、マッチに使われている物質であるため、燐の中では最も身近に所にあった物質でもある。融点が590℃、発火点が260℃ということで、常温では発火の危険がなく、扱いやすい物質であることから、マッチの側薬の材料として利用されている。(初期のマッチは黄燐だったが、毒性、自然発火の問題から禁止され、赤燐を用いたマッチが登場して、これがマッチの主流となった。)
↓参考まで
赤潮の科学
- 作者:
- 出版社/メーカー: 恒星社厚生閣
- 発売日: 1997/07
- メディア: 単行本
posted by MEICHIKU at 00:00| 京都 ☀|
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ケータイ刑事
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