シリーズ第1作「網走番外地」
作品データを記しておくと、1965年の東映東京の作品で、時間は92分、シリーズ中で唯一の白黒作品である。原作は伊藤一、監督と脚本は石井輝男、撮影は山沢義一、美術は藤田博、音楽は八木正生である。そして出演は、高倉健、南原宏治、丹波哲郎、安部徹、嵐寛寿郎、田中邦衛、潮健児、滝島孝二、三重街恒二、ジョージ・吉村、杉義一、佐藤晟也、関山耕司、菅沼正、北山達也、沢彰謙、風見章子、志摩栄、たちである。
物語は、網走刑務所に新入りの囚人たちがやってきた。2人一組の手錠で繋がれた中には橘真一と権田権三がいた。橘は貧農の生れで、義父との仲がうまくいかずに家を飛び出してやくざの世界に足を踏み入れ、親分のために傷害事件を起こして3年の懲役という判決を受けたのだった。一方、権田は前科五犯というお馴染みの男だった。2人が入れられた雑居房は、房内を仕切っていた古参の依田、初老の阿久田たちがいた。権田は依田に共鳴し、橘はことごとく反抗した。そんな中、依田たちは脱走計画を進めていたが、阿久田の裏切りで脱走計画が発覚し、潰れてしまう。数日後、山奥の作業に出た囚人たちは、護送トラックから飛び降りて、脱走する。橘も手錠が繋がれた権田と共に脱走したが...
本作では刑務所内のドラマがたっぷりと見られるが、それが白黒画面が与える陰影にマッチしていて、なかなか迫力がある。脱走後も橘の人情味溢れる行動が何とも言えない。後のシリーズを見る上でも見ておきたい作品である。
第2作「続網走番外地」
作品データを記しておくと、1965年の東映東京の作品で、時間は87分である。(本作からはカラー作品である。)原作は伊藤一、監督と脚本は石井輝男、撮影は山沢義一、美術は藤田博、音楽は八木正生である。そして出演は、高倉健、アイ・ジョージ、田中邦衛、室田日出男、中谷一郎、三原葉子、大坂志郎、嵯峨美智子、安部徹、嵐寛寿郎、沢彰謙、たちである。
物語は、刑期を終えて網走刑務所を出所した橘が巻き込まれる盗難事件を描いたものである。橘真一は刑期を終えて出所し、青函連絡船(1988年に運行終了されたが、'60's作品では、これは北海道と本州を結ぶ重要な意味を持つものである。)に乗っていた。そんな頃、函館で銀行強盗事件が起こり、ダイヤがごっそりと盗まれた。警察の捜査は手掛かりがなくて行き詰まってしまう。橘の乗った青函連絡船内で盗難事件が起こり、橘と一緒に出所した大槻は、修道尼のトランクがひっくり帰って出てきたマリモの1つを持ち帰った。東京に行くためのお金を稼ぐ為に橘と大槻はは青森で仕事を見つけ働くが、大槻の前にマリモを売ってくれという男が現れる。翌日の新聞には修道尼が持っていたマリモの中にダイヤが隠されていたことが載っていた。また、マリモを粉失したために修道尼は殺され、橘たちが犯人だという目撃者の証言も一緒に載っていた。で、真犯人を捕らえる以外に潔白は証明できないと思った橘は真犯人捜しを始めるが...
マリモの争奪戦には依田も絡んでくるということで、1作との繋がりもちゃんとあり、続編としての楽しみもちゃんと用意されている。手に汗握る展開は日本映画の黄金時代のノリも感じさせてくれる。
第3作「網走番外地 望郷篇」
作品データを記しておくと、1965年の東映東京の作品で、時間は88分である。原作は伊藤一、監督と脚本は石井輝男、撮影は稲田喜一、美術は藤田博、音楽は八木正生である。そして出演は、高倉健、林田マーガレット、嵐寛寿郎、中谷一郎、桜町弘子、杉浦直樹、砂塚秀夫、待田京介、潮健児、安部徹、関山耕司、沢彰謙、石橋蓮司、八代真智子、田中邦衛、由利徹、ジョージ・吉村、東野英治郎、梓英子、国景子、相馬剛三、東野孝彦、滝島孝二、たちである。
本作は、橘の故郷での物語であり、橘の過去も描かれている。久しぶりに故郷・長崎に帰ってきた橘真一。彼は、かつて恩義を受けた旭組のために、当時も今も対立する安井組の妨害にも負けず、旭組のために網走での仲間を呼び寄せて頑張るが、安井組の策略で怒り爆発!!という物語である。(任侠映画と言った感じの物語でもある。)
本作からはシリーズ作品として企画されたこともあって、主人公である橘真一の過去もより明らかになるということで、後のシリーズ作品を楽しむためにも見ておかなければならない作品である。
今回の3本は、いずれもが1965年の作品ということで、製作から40年以上の歳月が流れているということで、社会的なインフラも現在とは全く違う中で物語が進んでいくが、これが逆に、現代社会では希薄になった人情味が出ていたりして、良い所でもある。やはり、'60'sや'70'sの日本映画は面白いところがあるものです。(当時ヒットを記録した「任侠映画」と「無国籍アクション映画」の良いとこ取りをした感じである。)また、健さんも渋くて良いですね。