この作品は2003年の作品であるが、劇場公開になったのは2004年の秋である。また、物語の舞台は京都府舞鶴市ということで、そう言えばこの作品のロケの話題が京都新聞に出ていたことがあったということを思い出しました。
この作品の監督は森崎東、脚本は近藤昭二と森崎東、音楽は宇崎竜童、太田恵資、吉見征樹、出演は、肘井美佳、石橋蓮司、余貴美子、加瀬亮、浜上竜也、守山玲愛、岸部一徳、柄本明、笑福亭松之助、塩見三省、李麗仙、倍賞美津子、原田芳雄たちである。(「牙狼」のヒロイン・カオルを演じた肘井美佳さんのスクリーン・デビュー作でもある。)
知的障害を持つ少年を主人公にして、警察の汚職、在日朝鮮人への差別という社会問題を絡めたヒューマン・ドラマであるが、切れの良いテンポとユーモアに溢れたハートフルなドラマで、重くなりがちなテーマを上手く表現している。知的障害を持っているが人並み外れた記憶力を持っている15歳の少年サム。潜水夫をしている父親と二人暮らしであるが、母は在日朝鮮人で、サムの教育方針で父と対立して妹を連れて別居している。サムは人並み外れた記憶力で、中古車即売場で車の形やナンバープレートを覚えることを楽しみにしていた。ある日、彼は偶然に、盗難車のベンツの車中に隠されていた帳簿の中身(数字)を丸暗記してしまう。(当然、そのベンツのナンバープレートも覚えている。)が、これが警察の汚職を示す重要証拠であり、事件を闇に葬ろうとする警察、更にはその事件に絡んでいる暴力団によって追われることになり、誘拐されてしまう。また、何だかんだと理由を付けてサムを犯罪者として祭り上げようとする警察。これに、彼を助け出そうとする両親や彼が通う養護学校の担任の先生たちが絡み、事件は意外な方向へと...
社会問題をテーマにすると重々しいドラマとなることが多いが、テンポの良さとキレの良さがあり、重くならない所がよいが、その分、取り上げた問題に対するメッセージ性が薄っぺらになってしまい、コメディのような印象になってしまうのがちょっと残念な所でもある。(メッセージはそれなりには伝わってきますが...)と言って、コメディ作品というような軽い物ではなく、この辺りがちょっと微妙なところでもあり、絶妙のバランスと言うことも出来る。(ちょっと中途半端ということも出来る。)が、芸達者な役者が集まり、若い主人公を支えている。一度は見たらよろしいかと、と思うが、こういう内容の作品は、地上波放送では色々と問題があって、微妙な部分はカットされてしまうのがオチでしょうし...